今回は遼東半島の南端にある大連市と、さらにその先端部にある軍港の町・旅順である。25年前の卒論のテーマは「満州建国運動」関連だったこともあり、当時から気になっていた地域である。
夕方大連周水子空港に着き、地下鉄でホテルの最寄り駅に向かった。中山広場駅に到着し地上に出てみると、闇の中にライトアップされてピカピカ輝いている建築群が 目に飛び込んできた。歩いていると路面電車が走っているのも見えた。レトロ調の電車もあり、翌日乗ってみたが、内装には多くの木材が使われていて雰囲気がある。
ホテルにチェックイン後、晩ご飯と酒を買うついでにホテル周辺を散策した。港町だけあって「海鮮浜焼き」の店が多く見られた。関心はあるが、やはり食中毒がかなり心配だ。過去の苦しい体験も脳裏をよぎる。山東省威海ではアサリ酒蒸しを食べ、天津では生ガキをツルっとやった結果、見事に中毒になったのである。短期の一人旅ということもあり結局今回は諦めた。さてスーパーでは地元の白酒とビールを買うことができた。ビール「大連乾啤」は普通の味だった。白酒「大連陳醸」は喉にビリビリくる刺激的な辛口焼酎である。これを一口飲むと、疲労が急速に解消されるような力強さを感じた。
朝晩の食事であるが、一人旅なのでパンや即席麺、あるいは町の適当な食堂に入って済ませることが多い。港町らしく、食堂にはサワラ(鰆、中国語は「鲅鱼」)の水餃子が売られていた。今まで魚肉餃子を食べたことはなかったので少し好奇心が生じた。実際に食べてみると、豚肉餃子とは違って味は淡泊であるが、魚の独特な旨味を感じた。夜は適当な店からテイクアウトしたものをホテルの部屋でテレビを見ながら食べるのが一番落ち着いていい。ホテルの近くには天津街という名物通りがあり、多くの屋台で様々な食べ物が販売されている。今回は薄煎餅巻きや羊肉串焼き等を買い、「大連陳醸」を飲みながら食べた。
何も考えず、ただ烈性酒を飲みながらのんびり大連の夜を過ごす。夜も更け、ホテルの窓からは闇の中に浮かぶ月、電飾された建物が見える。そして旅情も深まっていく。 (つづく)