三泊四日の北京(下)

★北京動物園パンダ館  人生で初めて実物パンダを見たのは上野動物園だ。確かそれは小学生低学年の頃だったと思う。残念ながら当時の記憶は一切残っていない。今回のツアーはパンダ目的で参加した訳ではないが、本物のパンダが目の前で動き回る姿を実際に見ると、初老男子の枯れた心もムクムクと高揚してくるのだ。同時に、パンダが「中国外交特使」であることも充分に納得できた。

★書作品のお土産  ツアー旅行ではお決まりの土産物店巡りがある。今回はシルク店や宝石店、ラテックス寝具店などの店に連れて行かれた。そして帰国する最終日は景山公園付近の工芸品店に行き、関維霖さんという書画家の実演を見学した。僕は元々書画の趣味があるので、興味深くジッと眺めていた。その時の画題は春蘭で、関さんの飄々と描き進めていく姿は、なかなか手慣れたものだと感じた。そして記念に関さんの作品を一つお土産にしようと考えた。結果、赤い料紙に「福祿壽禧」の四文字、 それを黄色い裂地で囲んでいる中国らしい鮮やかな軸を選んだ。とても福々しい雰囲気の一幅で、時々広げて眺めていると、家庭が幸福になりそうな瑞気を感じる。参考に関さんの紹介を「百度百科」より引用する。    

★食事と酒  今回のツアーの食事は、朝はホテルのビュッフェだった。個別の席でのんびり食事ができた。ワンタンやオムレツなどは、その場で注文し調理してもらえるので、熱々をおいしくいただいた。そんな訳で毎朝食欲に火が付き、お腹パンパン状態で集合場所へ向かった。昼と夜は地元のレストランでの家庭料理で、大きなテーブルにツアー参加者の皆さんと同席した。特に「全聚徳」では久しぶりに北京ダックをいただいたが、このオイリーな鴨料理もたまにはいいものである。

夕食後の自由時間は、地下鉄や市バスで買い物や夜食を食べに出かけた。僕の場合、当然「羊肉串焼」が主目的である。去年は一人で行った鼓楼街の「小北鯨」という名の店、今回は二人で出かけ、喉の羊あぶらを酒で流しながら串焼をパクついた。北京ということもあり、ツアー中ずっと白酒「二鍋頭」を携帯し、飲み続けていたので、帰国時にはさすがに飲みくたびれた。

さてさて、次回再び嫁さんと北京に行く場合は、もう自由旅行で良いと思う。慌ただしい観光スポット巡りに振り回されることなく、のんびり気ままな北京が楽しめるであろう。

三泊四日の北京(上)

北京は過去に何度か訪れたことがあるが、嫁さんは一度も行ったことがないとうことで、今回は一緒に阪急交通社のツアーに参加することにした。自由旅行もいいが、旅行後の休息を含め5日位と時間が限られていたので、便利で効率の良い団体ツアーにした。

【参考】阪急交通社ウェブサイト
 http://www.hankyu-travel.com/tour/detail_i.php?p_course_id=R105NH&p_hei=30

★天安門・故宮  故宮を訪れた日は、ちょうど全国人民代表大会の最中で、天安門広場周辺は警備がかなり厳重であった。しかしそんな時こそ団体旅行の強みが発揮される。長い行列ができている検査所の横をスルっと通り過ぎ、短時間で天安門にたどり着くことができた。広大な故宮は、約10年振りの訪問である。「またここに来たか…」と、なつかしい気分になった。

故宮の北には景山公園がある。ゆっくり登っても確か15分ほどで山頂に着いたかと記憶している。そこから見る故宮の眺めは壮観で、ずっと見ていても飽きがこない。さて、公園の一角に、明末の崇禎帝(すうていてい)が首を吊って死んだという生々しい場所がある。故宮内の「珍妃の井戸」(珍妃が投げ込まれて殺された)もそうであるが、現在多くの観光客がワイワイと行き交う場所も、過去にはゾッとする事件が起きていたということである。

★八達嶺の長城  八達嶺は約20数年振りか。明代の堅固な城壁が山の稜線に沿って延々と続く姿は壮観である。以前訪れた時は、時間内になるべく遠くまで行こうと意気込んでいた。しかし今では疲れやすい体質になっているので、のんびり歩き、適当な場所まで行ったら戻ろうと考えるようになった。この変化こそがまさに心身両面の「老い」というものなのだろう。毛沢東の詞に「不到長城非好漢」(長城に達しなければ好漢ではない) という有名な句があるが(参照:下の碑文の写真)、ある人がその句に続けて「到了長城変老漢」 (長城には着いたが老人になってしまった)と茶化して書いていた。まぁ、それは私自身のことでもあるなぁと感じた。そして、あと数十年も経てば、さびしいことであるが、旅行すること自体が面倒に感じるようになっているかも知れない。