一泊二日の依蘭(上)2023.04.15


今回は土日の休みを利用して旅行した。依蘭は地方にある小規模な町、観光スポットも少ないので一泊で充分だと考えたのだ。行政区画としては哈爾浜市に属し「依蘭県」と呼ぶ。百度百科によると、面積は約4,616㎢、人口(2020年)は約25.8万人。ただ実際訪れてみると事前には知らなかった興味深い場所やこの町を起点にして移動すると便利な史跡なども多いので、旅はやはり日数的に余裕があったほうが旅程的にも心身的にも都合がいい。
さて依蘭までは哈爾浜駅から高速鉄道を利用。車窓からの景色は平野に広がる農作地が多かったが、途中から丘陵地帯に入り、きれいな山並みも見ることができた。約1.5時間で依蘭駅に到着、高い位置にあるホームから周囲を見渡すと、高いビルはなく農地が延々と広がっていた。つまりこの駅は町から少し離れた場所に建設されたということだ。町の中心部まではバスで25分ほど。駅を出るとロータリーに町行きのバスが待機しているので便利だ。


鑫雅朶酒店  バスを降りてから徒歩で一泊お世話になるホテル「鑫雅朶酒店」に向かう。予約した当初は小さな町のホテルということであまり期待していなかったが、到着して部屋に入るとまぁまぁ広く清潔さも感じられたので安心した。ところでホテル名にある「鑫」という漢字、これは日本で普通は使用しないので、中国で初めて見た時は面白い字だなぁと思ったものだ。「金」が三つもあり縁起が良く金運も良くなりそうな印象を受ける。辞書で調べると確かにそのような意味があり人名や屋号に使われることが多いという。実際中国の街を歩いていると商店の看板にこの字が書かれているのをよく見かける。


町の様子  町の中心にある「依蘭商厦」は中央大街と通江路の交差点の北東部にある商業ビルだ。私が靴下を買いたい事をホテルのフロントのおばさんに聞いたところ、ここを勧められた。日本から持って行った靴下のすべてに穴が開き困っていたのだ。行ってみると最上階の催事場で安価で質も良さそうな靴下が売っていたので8足購入した。記憶では1足3元で合計24元、日本円は現在レート480円くらいだ。まぁ良い買い物ができて満足している。
依蘭商厦の入口には赤い三輪タクシーがいくつも止まっていた。バス本数と路線自体が少ないので住民にとっては大切な交通手段である。私は今回は使うことがなかったが、雨の日の買い物には便利だろう。
商業街の辺りは比較的高いビルも多く買い物客で賑わっているが、中心部から外に向かって歩いて行くとすぐに低層の建物が多くなり、空が広く見えるようになる。やはり依蘭はそれだけ小規模な町ということなのである。ただ私自身はこのような小ぶりな町が好きだ。初めて来た場所なので実際にはどうか分からないが、人や建物による圧迫感をあまり感じず、逆に長く住むほど愛着がわいてくるような気がする。


廃墟の古住宅  私はなぜか多少荒廃して薄汚くても時代を経た古い街や建物に魅力を感じる。以前に当ブログで、例えば「10日間の吉林市・長春市」でも廃墟となった古住宅を取り上げている。今回依蘭に来た目的は廃墟の古住宅を見に来たわけではなく、元々それがあること自体も知らなかったが、一旦自分の目でそれを見てしまうと気になって仕方がないのである。まぁこれも変な性格だなぁ~と自覚してはいるが・・・。その魅力を一言で言えば「味があること」であり、もっと言えば「懐かしさ、家族の温かさ、生活の喜怒哀楽の記憶が伝わってくるような気がすること」とも言えるだろう。現在古住宅は順々に解体され高層マンションに建て替え、住民もその部屋に移転しているのであろう。確かに最新設備の整ったマンションでの生活は安全で快適で便利だろう。しかし時には炭を焼くにおいがただよう路地、当時泣いたり笑ったりした古い家を懐かしむこともあるだろう。


一日目は今回の主要目的地である依蘭博物館とテーマパーク「五国頭城」にも行ってきたのだが、それらの画像がかなり多いので次回紹介することにする。
夜はホテルの部屋で、依蘭商厦の斜め向かいの地下にあるスーパーで買った黒竜江省伊春市産の白酒「農墾人」(38度)を飲み、また普段は健康を気づかいほぼ口にしないジャンキーなインスタント焼きそば今麦郎「香辣肉醤炒麺」を食べながら中国テレビドラマ「燦爛的季節」(2022年、全40話)を見る。よく知らない町の宿で酔っ払いながら好きなドラマを見るのもいいものだ。部屋の窓からは暗闇に「依蘭県人民医院」の文字が赤く光って見える。Ok, let’s drink chinese hard liquor and eat junk food tonight!! まぁ何かあればこの病院に行けばいいので安心だ。このようして夜は更けていくのである。对不起,都是我的错・・・ 

三泊四日の瀋陽(5)最終回


【三日目】馬家焼麦  北陵公園を出てから地下鉄で移動、西関美食街近くにある百年の老舗「馬家焼麦」で早めの夕食をとることにした。店名にある通り焼売(シューマイ)が看板料理である。なお焼売は中国では「烧卖」或いは「烧麦」と表記する。「卖」と「麦」は同じ発音(mai)である。私は「伝統牛肉焼麦」と「素燴湯」(野菜とろみスープ)を注文、アツアツをおいしく頂いた。


【四日目】最終日  列車の出発時刻まで余裕があったので、延寿寺の西塔(チベット仏教の仏塔)と張作霖爆殺事件(皇姑屯事件)の現場、及びその博物館に行く計画を立てた。ただ博物館は残念ながら閉館中だった。
西塔は大きくて立派な白いラマ塔である。後で知ったことだが創建は1645年、その後破損がひどくなり1968年に撤去、1998年に再建されたという。白いラマ塔と言えば北京の北海白塔が有名だ。東京の上野公園にも似たような塔(大仏山パゴダ)があるのを思い出した。
参照:【出国直前】三泊四日の東京&成田(2022.10.21)


張作霖爆殺事件(1928年6月4日)は中国で「皇姑屯事件」と呼ばれている。それは爆破現場が「皇姑屯駅」の東側近くで発生したからだ。爆破現場を見た後、博物館に向かう途中の道路標識に駅の表示があったので行ってみたが、駅舎は発見できなかった。ネットで調べると1907年建立の古い駅だったが、2020年に唯一残っていた乗車券販売業務も停止、完全消滅したという。さて肝心の列車の爆破現場であるが、現在そこには記念碑が建てられている。ただ鉄路敷地内にあるため碑の近くまで行くことはできない。少し離れた場所からフェンス越しに眺めるしかない。歴史を揺るがした大事件の現場、今はその横をただ列車だけが通り過ぎる目立たない場所になっていた。


渾河で流水飲み  皇姑屯事件博物館が閉館中だったので空いた時間で市内を流れる「渾河(こんが)」を見に行くことにした。博物館の裏にある大きな歩道橋で線路を渡り、少し歩いてから地下鉄「重型文化広場駅」で乗車し「大通湖街駅」下車、徒歩で川岸の「渾河晩渡公園」まで向かう。「渾河晩渡」とは瀋陽の素晴らしい景色「盛京八景」の一つ。途中コンビニ「ジョイキー」で缶ビールを買い、少し歩くと公園に到着。林を抜けると視界が広がり、広々とした川の景色が現われた。歩道も整備され散歩やジョギングが楽しめる。川の中に入って釣りをしている人もいた。

さて適当に座る場所を見つけて恒例の「流水飲み」を始める。何をするわけでもなく酒を飲みながらボーっと川の流れを眺める。精神的にいやされるひと時だ・・・。
これで今回全ての旅程は終了、このあと川辺を少し歩いてから瀋陽駅に向かい帰途につく。


帰りの車窓からは広大な農地のいたるところで焼き畑をしているのが見えた。薄暗がりの中でオレンジ色の炎がキラキラ光り白煙をあげている。車内にもわずかだが焼けたにおいが漂っている。やがて哈爾浜に到着、馴染みの駅を見るとホッとする。次はどこを旅しようかなどと考えながらバスで帰宅、おつかれさまでした・・・。