五泊六日の黒河(4)2023.06.21


【四日目】黒龍江で水浴び  この日も特別な予定はないが、天気が良ければ川で水浴びをしようと考えていた。先日多くの人たちが泳いだり遊んだりしているのを見て自分もしようと思い付いたのだ。ホテルで朝食をとってから川岸の公園へ向かう。少し歩くと水泳をしているおじさん集団がいたので、その辺りならば安全だと考え、荷を下ろして服を脱ぎ、簡単にストレッチをしてからゆっくり川に入る。水はそれほど冷たくない。思ったよりも流れの圧力を感じる。慣れない場所で無理をすると危険なので浅いところにとどまる。水は少し褐色に濁っていて潜ると水中での視界はあまりよくない。また近くに止まっている観光船から流れ出ているのか、時々機械油か燃料のような異臭がするのは不快である。まぁそれでも夏の黒龍江で楽しいひと時を過ごすことができた。


大黒河島で散策  水浴びの後は、何も用事はないが駅まで歩いて行き辺りをぶらぶらする。駅前の横断歩道では白線の塗り直し作業をしていたので少し眺めていた。動作はゆっくりだがまっすぐきれいに塗り重ねていく技は見事である。その後も街中を歩き続け、途中で市バスに乗って大黒河島へ行った。この場所は到着初日にガイドの李さんに最初に案内された場所だ。対岸に見える大きなロシア国旗が印象的な場所だ。この日は土曜日、ロシア側の人々も休日を楽しいんでいるのか、陽気な音楽と歌声が風に乗ってこちらまで聞こえてくる。ウクライナと戦争中ではあるが、遠く離れた地では日常生活への影響は大きくないのかもしれない。


愛輝歴史陳列館・黒河商会歴史陳列分館  川岸から近い場所にレンガ造りの立派な建物があるので行ってみると、「黒河商会歴史陳列分館」であった。本館はというと、先日璦琿で外国人ということで入館を断られた「璦琿歴史陳列館」だ。ただここは問題なく入館できた。聞くと建物自体は最近建てられたものだという。内部は当時使われていた品々が多く展示されている。印象に残ったのは初めて見る長く大きなソロバンや「大阪・木寺製作所」の看板など。「黒河省・島田支店」の筆筒も少し気になった。「島田」とは何の「島田」??


「列娜餐庁」で夕食   黒河商会陳列館の見学後はホテルに戻り二時間半ほど休憩。そして前日と同じ西洋料理店「レナ」に行って夕食をとる。行く途中の河岸公園ではダンス集団に遭遇、お揃いのピンクのユニホームを着て意気揚々とステップを踏んでいる。別の服を着て後ろから付いて踊っている人たちは新入生か、それとも飛び入り参加者だろうか・・・。
レナ到着、飲み物はウクライナ産ウォッカ「MERNAYA」の小瓶、料理は「假日沙拉(ホリデイ・サラダ)」、「生蠔(生ガキ)」、「俄式香煎鰈魚(ロシア式カレイのムニエル)」を注文。生ガキは今回中国に来て初めて食べる。甘いタレをかけてツルッと食べると、磯の風味が口いっぱいに広がり美味だ。合間にキリッと冷えたウォッカを飲んで口の中を整える。カレイのムニエルも非常においした。外はパリッ、中はしっとり、絞ったレモン汁のほどよい酸味も加わり魚の旨味を十分に味わうことができた。今まで哈爾浜では本格的な西洋料理店へ行ったことはないし関心もなかった。しかし今回おいしい料理を食べ、哈爾浜でもたまには西洋料理店で食事するのも悪くはないなぁと意識が変わった。


食事も終わり外に出る。レストラン前の道を渡った地点から「中央商業步行街」(歩行者天国)がはじまる。そこで夜は食べ物をはじめ服や雑貨など色々な商品が露店販売される。適当に眺めながら通り過ぎ、河岸の公園へ入る。その夜見る対岸の電波塔は前夜と違い、赤・青・虹色ときらびやかに変化していた。土曜の夜だからか町全体が明るく光り、にぎやかな様子がうかがえた。

ホテルに戻り廊下の窓から外を見ると、対岸のロシアの街では花火が打ち上げられている。音も大きくはないがこちらまで伝わってくる。ロシアの皆さんは土曜の夜を楽しんでいる。こちらも酒を飲みテレビドラマを楽しんでから寝ることにしよう・・・。

五泊六日の黒河(3)2023.06.21


【三日目】 ホテル移動のため朝8時に李さんがホテルまで迎えにきてくれた。自分以外にも前日は広州人、今日は台湾人と、李さんのガイドの仕事もなかなか順調なようだ。寝ていても朝から外がざわざわ騒がしかったが、ホテルの周辺では毎日朝市が開かれていて人々でにぎわっている。車で約5分、リバービューのホテル「望江一号」に到着。部屋はまだ用意できないとのこと、荷物だけを預けてからホテルの朝食をとる。本来朝食は泊まった翌日の朝に付くものだが、そこは大らかな中国人ホテル、チックイン日の朝も食べることができた。さて前日は郊外を精力的に観光したので、この日はのんびりと近くの河畔公園や街中を散策することにした。


黒竜江公園 かなり立派に舗装整備された公園がホテル「望江一号」の前の辺りから東にある大黒河島まで長く続いている。それに沿って緑地部分もあるので暑い時には木陰を歩くこともできる。散策に出たのは朝9時頃、そこでは散歩する人やサイクリングする人、川で洗濯する人や泳ぐ人など様々だ。自分ものんびりと大黒河島の方へ向かって歩き始める。対岸はロシアの街・ブラゴベシチェンスク、車や人の往来が点のように小さく見える。私は視力が弱いが、視力が良ければ人物の性別、更には年齢層も認識できるであろう。


本場「ヘイホーカット」@星時刻  この日、特にすることもないので散髪することにした。前回は2月だったか、だいぶ髪も伸びボサボサしてきたのでいい機会だ。老化で髪も薄くなってきたが、散髪しないと逆に見栄えも悪い。早速ネットで探すと、黒河公園から徒歩圏内、カット料金も20元と手頃な理髪店「星時刻」を見つけた。電話で込み具合を確認してから向かう。理容師は二十代前半らしき若い男性。慣れた手さばきでカット・洗髪・ブローと進み、見事「ヘイホーカット(HeiHe Cut・黒河カット)」が出来上がった。さっぱり・スッキリ、ヘイホ~! 軽やかな気分で再度河畔へ向かう。この日は天気もいいので人出も少し多くなったようだ。自身は床屋へ行く途中に買ったビールを取り出して恒例の「流水飲み」を始めた。何をすることもなく、ただボーっと対岸のロシアの街を眺めながらビールを飲む。普段哈爾浜では過酷な労働に従事して心身ともに疲弊しているので、時にはこのようにのんびり過ごすのも悪くない。しばし眺めを楽しんでからホテルへ向かう。

「ヘイホーカット」でスッキリする信州狂人 


ホテルに戻りフロントでキーを受け取り部屋に入る。狭いが設備は整っいて一人なら充分である。リバービューと言っても自分の部屋から見えるわけではなく、共有部分の廊下から部分的に見えるというホテルだ。もっとも各階の部屋数は多くなく人の往来も少ないので、廊下に留まり落ち着いて眺望を楽しむことはできる。さてさて、酒を飲みながらしばらく休息しよう。先日購入した赤ワイン「スターリン」、見るとProduced and bottled In Georgia、グルジア産ワインであった。濃厚で適度な渋みと酸味があり自分好みの味だ。調子づいてグビグビ飲んでいると酔いが回りベッドに横たわる。夕食に出かけるまで少し寝ることにしよう・・・


「列娜餐庁」で夕食  「レナ・レストラン」はこの街で有名な西洋料理店でガイドブックにも載っている。実際に行くと同名の店舗が道を挟んで二つあるので戸惑う。事情を調べると、創業は南側にある比較的小さな店で、ロシア料理を提供していた。その後、北側に姉妹店を開業すると、創業店はロシア人向けの中華料理店となり、新店でロシア料理を提供するようにしたということだ。
午後7時過ぎ、ホテルを出て河畔の公園を通って店に向かう。辺りは薄暗くなり、点灯している建物も見える。しばらく歩くと北側のレナ・レストランに到着。店内に入ると前日の「徳洛克」と同様に西洋風装飾で落ち着いた雰囲気があり、そこそこにぎわっていた。さて飲み物は「俄羅斯鮮啤(ロシアビール)」、料理は「蘇泊湯(ボルシチ)」、「皇后沙拉 (クイーンサラダ)」、「罐蝦(エビの壺煮込み)」、「五花肉大串(豚肉の串焼)」を注文。オススメはエビ壺煮込み。エビが甘辛ソースと絡み熱熱・プリプリ、いつかまた食べたい一品だ。

北側のレナ・レストラン
南側のレナ・レストラン こちらは中国料理を提供している


腹も満たされ店の外に出ると、キラキラ光る夜の街が広がっていた。帰りも河畔の公園を通る。河に面する高く大きなビル群は全面赤色に電飾され、そこに白抜きの大文字が表示されている。判別できない字もあったので意味は不明だが、ロシア側に何か軽いあいさつ程度のメッセージを派手な色で伝えているようである。それに比べると対岸のロシアの電飾は地味な印象を受けたが、それは少し離れているからであって、ロシア側から中国側を見ると実はそれほど派手に見えていないのかもしれない。

ブレた画像をみるとロシア国旗のように見えて少し驚いた・・・

就寝前、酒を飲みながら部屋の前の廊下で黒竜江の夜景を眺める。のんびり過ごした一日、散髪もしてスッキリした。翌日は四日目、何も予定はない。何をしようか、天気が良ければ河で水浴びでもしようか・・・。そんなことを考えながら夜のロシアの街をしばらく見つめ、そしてこの日は終わった。