【笨字考】オモシロ漢字「笨」2025.07.04


数か月前のこと。通勤途中に鍋料理店「龐府大院鉄鍋炖・本店」がある。その外壁には宣伝用の料理写真パネルが3枚貼られている。普段はあまり気に留めなかったが、ある日ふとそこに書かれている文字を見て疑問が生じた。それは「笨鸡」。私にとって「笨」(拼音:bèn)は中国語で「愚か」「バカ」という意味の認識だったので、「笨鸡」=「バカ鶏」(foolish chicken) ということになる。しかし悪いイメージの言葉を店がわざわざ使用するとは普通は考えられない。そこで辞書で調べてみたが、納得できる説明が見当たらなかった・・・。


仕方がないので職場にいる中国人に質問した。それによると:
「笨鸡」とは、田舎の自然豊かな野外環境で化学飼料などを使わずに飼育した鶏のこと。天然の虫やミミズなどを捕食する。その結果、鶏舎で人工的に飼育された鶏肉よりも美味しく、当然値段も高い。「笨~」の他の用例として、「笨猪」(ブタ)、「笨鹅」(ガチョウ)、「笨鸭」(カモ)などがある。またこの表現は主に中国東北部で多く使われている。もちろんその店が本当に高級な「笨鶏/ベンジー」を使用しているかは保証できない。
以上の説明から、「笨」は「洗練されておらず多少の愚鈍さはあるが、天然に近い状態で健全に生育するもの」と理解できる。これでようやくモヤモヤ感が解消しスッキリした。


さて、それからしばらくしたある日のこと。自宅でブログで使う旅行写真を整理していた時、その中の1枚に目が留まった。それは雲南省・昆明市内で利用した食堂「碗碗香剁椒木桶飯・穿金路店」の画像。入口の看板には何と「笨萝卜」と書かれていたのだ。つまり「笨」は家畜だけでなく、野菜にも使用するという実例だ。ネットで調べると意味おおよそ二つある。⑴湖南省の地野菜の一種、⑵長沙方言で、愚直な人や親しい人に対する愛称。この食堂は湖南料理(湘菜)の店なので、ユーモアから長沙方言を店頭に表示したのだと思われる。


さてさて「笨」という字、なかなか深い意味を有しているようで、バカにできないな~と感心した次第・・・。