四泊五日の銀川・阿拉善左旗(5)最終回


最終日、哈爾濱に戻る日だ。飛行機は16:20発なので、朝から昼過までの時間を利用して「黄沙古渡・原生態旅游区」を観光する。
起床後、窓から外の天気を確認するとスッキリ晴れているので安心する。蓮花型の人民劇場もきれいに見える。朝食はホテルでしっかり食べ、その後は予約していたタクシーに乗り黄河へ向かう。
ホテルからは1時間程の距離、その間は回族の運転手さんから彼の仕事やイスラム教の戒律、中国におけるイスラム教の現状等について色々と話を聞いた。同じイスラム教徒として新疆での状況にも同情しているという。彼から聞いた面白い話を一つ紹介する。彼の故郷である「同心県(寧夏回族自治区呉忠市)」は回族の人口に占める割合が100%という話で、少し驚いた。漢族が来て新たな店舗を開いても住民は誰も利用しないので、やがて閉店に追い込まれるらしい。後にネットで調べると、百度の説明では「100%」ではなく「89%」と記されていたが、何れにしても非常に高い割合であるということには違いない。機会があれば同心県を訪れ、どのような雰囲気かを感じてみたいとも思った。


黄沙古渡・原生態旅游区  9時到着。午後1時まで4時間の観光予定だ。この旅游区は広大で、自身が歩き回ったのは「黄河古渡文化区」というエリア。入口の東門から黄河の河岸までは徒歩で約40分、日射しも強く時間も節約したいので電動カートに乗って河岸近くまで移動する。かなり荒涼とした乾燥地帯で、人工的に植樹・潅水しないと植物はほとんど育たないという厳しい環境だ。カート降り場から自由な散策が始まる。白楊樹の林の奥に黄河の流れが見えると気分も高揚する。
過去に黄河の河岸まで行って水を手で触れたのは、済南(1992)が最初、その次は蘭州(2012)であった。参考に当時の画像も掲載する。

済南の黄河(1992)
蘭州の黄河(2012)

流水飲み@黄河  流水飲みは過去に何度も行っているが、母なる河・黄河での流水飲みは格別である。ボーっと河の流れを眺めながら、地元の白酒を飲む。ただこの地域でこの季節、日射しが強く暑い。しばらく飲んだら移動して場所を変え、そして適当な場所でまた流水飲みを再開する。
ところで今までの経験として、黄河の水際には軟らかい泥が堆積していて、歩くときに注意しないと足が泥中にズボッとはまり大変危険だ。一度水中に転落すると岸に上がるのは困難だと思われる。済南の画像で、ズボンの右膝辺りが汚れているのは、水際で足を取られて泥に膝をついたからである。


砂丘エリア  阿拉善では計画的にテンゲル砂漠を訪れ砂丘に登ったが、銀川の黄河でも砂丘に登ることになるとは思わなかった。砂丘スライダーやラクダ乗り体験など子供たちが喜びそうな施設が整っている。ただ暑さでへばっているような姿のラクダを見て少し気の毒になった・・・。自身、連日の観光で疲れは残っているが、何とか砂丘の上まで登る。上から見下ろす黄河の流れも水際での景色とは違ってまた美しい。酒がまだ残っていたので再び流水飲みを行う。


白楊樹について  銀川では白楊樹が道路沿いに植えられているのをよく目にする。この地域は放置しておくと砂漠に戻り自然に植物が育たないため、人工的に植樹・潅水する。その際、乾燥に強い「白陽樹」を多く利用するのだという。その幹は名の通り白く、それに触れると白っぽい粉が少し手に着く。白楊樹並木の白と緑が空の青さに映えて美しく、この地域ならではの独特な雰囲気を感じさせる。


空港での食事  チェックインを済ませ、搭乗までの時間を利用して食事する。ちょうど老舗料理店「老毛手抓」の分店があったので入る。ここでは銀川到着初日に「老毛手抓・本店」で食べた名物「手抓羊肉」と御当地麺料理「羊肉臊子麺」、そして勿論「西夏ビール」を注文。麺は具沢山で栄養バランスが良く元気が出そうだ。
そろそろ銀川ともお別れ。最後の銀川の味を楽しむ・・・。


哈爾濱行きの飛行機に搭乗後、離陸。しばらくすると機内食が配給される。チキンライスを食べる。味はOK。やれやれ、様々な思い出を心に詰め込んで哈爾濱に戻る。
実はこの文章、8月9日、雲南・麗江の民宿「麗江梵雲若水客桟」で書き上げている。この宿では夜中でも音楽を比較的大音量で流しているので、自分も負けずに部屋で地元の白酒を飲みながら、ジョン・レノン「Woman Is the Nigger of the World」、ジョン・デンバー「Country Road Take Me Home」、イーグルス「Doolin-Dalton」等を大音量で聞く。なかなかイイ気分だ・・・。
そして哈爾濱空港に到着。しばらく自宅で休息し、次の旅の計画を立てよう・・・

四泊五日の銀川・阿拉善左旗(4)2024.05.01🐪


騰格里沙漠(テンゲル/トングリ砂漠)  この日のメインイベントは中国で4番目に広いというこの砂漠の見学だ。朝8時、前日に予約したタクシーに乗り出発する。市街地を離れると緑地帯が減り、荒涼とした乾燥地帯が現れる。ただ道路沿いの砂地は緑化対策として植栽が行われ、砂の流動を防ぐためか地表にはネット状の物が見える。途中、工事中の高速鉄道駅が見えた。中国での高鉄網の拡大はまだまだ進んでいるようだ。そのうち「阿拉善英雄会雕塑広場」のモニュメントや、観光客向けのラクダ乗り場があったので立ち寄って少し見学した。
なお「阿拉善英雄会」については、ネット「内蒙古草原旅游」所載の情報を以下に引用する。


阿拉善英雄会夢想公園  ホテルを出発してから約1時間、今回観光する最初の砂丘エリアに到着。ここは「阿拉善英雄会」のメイン会場で、スタジアムや宿舎など様々な施設がある。ただ開催期間以外は訪れる人は少ないのか、四駆車が多少確認できるだけだ。タクシーを降り、砂で半分埋もれた門を乗り越えて砂丘エリアに入る。このエリアは四駆車の専用コースなのか、広い範囲で多くのタイヤ痕が残り、砂丘本来の美観が損なわれていたのが残念であった。それでも手前にある小ぶりな砂丘に登ってみた。砂山に登るのは久しぶりで、前回は確か2012年、当ブログのトップ写真にも使っている敦煌の鳴沙山だったと思う。登り始めると靴が砂に埋もれて歩きにくいが、何とか上部の稜線までたどり着く。頂からの眺めは良く、少し離れた位置にある池もきれいに見える。そして砂丘の下に紫色の物体が見えたので確認しに下りる。名前は分からないが紫色のきれいな花だ。最初は気づかなかったがこのエリアにはこの花が数多く咲いていた。砂に埋もれた花植物、何とも不思議な光景である。その他、黄色い花や甲虫も確認した。このエリアには池もあり、前の晩は雨も降ったようなので、時季による違いはあるだろうが、生物が比較的生息しやすい環境なのかもしれない。


2か所目の砂丘エリア  最初のエリアから車で約20分、別の砂丘エリアに到着。見ると周囲に多数の四駆車が見えたので、これから散策する砂丘の景観を心配した。道路から砂丘エリアに入り、奥に進むにしたがってタイヤ痕や人の足跡はほとんど見えなくなり安心した。このエリアでは自然が生み出す砂丘の美しさを充分に楽しむことができた。なお最初のエリアで見た紫色の花植物は無かったが、甲虫が動いているのを何度か確認した。そして最後は比較的大きめな砂丘に登り、その頂に腰を下ろして砂漠の風景をしばらく眺めた。砂丘は遥か彼方の地平線まで続いている。これを見ていると日常の悩みやストレスから解放されるようで精神的に癒される。帰り際、観光客用のラクダの横を通った。ラクダを見ていると顔の表情が時々変化して面白い。さてさて砂漠見学も終了、銀川へ戻るため市街地にある長距離バスターミナルへ向かう。


阿拉善➔銀川  前日に来た道を通って銀川に戻る。賀蘭山脈を眺めながらのバス旅だ。馬の放牧されている風景はこの地方独特でイイ感じだ。また幾つかの山の上には烽火台らしきキューブ型の建造物が見えたので撮影した。銀川近くになると景色は山岳地帯から平原へと変わり、しばらくするとバスは市街地にある鉄道「銀川駅」近くの長距離バスターミナルに到着。そこから市バスに乗り換えてホテルに向かう。


銀川で夕食  午後3時過ぎにホテル到着、夕食まではしばらく休憩する。そして午後6時過ぎに外出。徒歩約10分、飲食ビル「隆基第八大街」の中に「華彪麺館」という店があり、そこでご主人オススメの「孜然牛肉臊子炒麺」を軽く食べる。甘くスパイシーな味付けでモッチリ麺に野菜と肉が絡んでおいしい。
後はホテルの部屋で酒をゆっくり飲みながら他の何かを食べたいと思い、「新疆艾力焼烤羊肉串」という店で羊肉串焼き8本をテイクアウトし、コンビニで地元の焼酎「銀川白酒」を買ってからホテルに戻る。店の前の路上では羊肉を吊るして串肉を準備していたが、日本ではあまり見られない光景で面白い。
さて部屋では、パソコンを見ながら串肉を頬張り、白酒をグビグビ飲む。そして今回の旅の思い出に浸る・・・。う~ん、なかなか気分の良いひとときだ・・・

さてさて、翌日は哈爾濱に帰る日だ。ただその前にまだ銀川での楽しみが一つ残っている。それは午前中に行く「黄河風景区」だ。飛行機の出航時間まで余裕はないので、タクシーをチャーターすることにした。まぁ今回の旅は日数的に限られているので多少の出費は仕方がない。それよりも久々に黄河の流れを間近で見たいと思う気持ちが強かったのだ。前回、黄河を間近で眺めたのは2012年8月の蘭州。その辺りを流れる黄河は水の流れは比較的速いという印象だった。
この夜も窓からは人民劇場のライトアップが見える。白酒を飲みながら、しばし銀川の夜を楽しむことにしよう・・・。