1ヵ月間の中国西部(10)西寧 ❶


【8日目】この日はトルファンから青海省・西寧へ移動。西寧では4泊する。トルファン北駅から11時10分発の列車D576に乗り、西寧駅に19時40分頃到着。

約9時間と長時間の移動だが、車窓からは様々に変化する景色を楽しむことができた。トルファンを離れてからずっと褐色の乾燥地帯が続く。トルファン郊外では火焔山の手前に多くの石油採掘装置(ポンプジャック)が稼働している。その後、時々沿線の都市や広大な農作地も見え、色とりどりの花畑が現れると心もウキウキする。18時半頃に通過した甘粛省「山丹馬場駅」の辺りから緑色の山岳地帯に入る。大型で毛の長いヤク(氂牛・リギュウ)が放牧されていて、この地域独特の雰囲気が感じられる。また見わたす限り一面が黄色い絨毯のような菜の花畑が頻繁に見慣れた。う~ん、実に見応えがある。西寧に近づくと市街地の北側に「北山」が迫って見える。


西寧駅に到着。市バスに乗り、予約してあるホテルへ向かう。列車からも見えた街北側の「北山」が駅前広場からもすぐ近くに見える。マグマが街を飲み込むかのような赤い山は実に迫力がある。駅から15分ほどでホテル最寄りのバス停に到着。すでに日没後で暗くなっていたが、街の灯りが周囲を明るく照らし、人出も多いように感じた。


ホテル「白玉蘭酒店」に到着。チェックインする前、隣のコンビニで部屋で飲む酒を購入。ビールは「青海湖ビール」と「拉薩ビール」、焼酎はブルーの瓶がきれいな青稞酒「互助」。ハダカムギ(青稞)が原料の青稞酒には度数の低い醸造酒もあるが、これは度数が42°の蒸留酒だ。さて部屋に入るとその狭さにがっかりする。窓も小さい。安いやつやん~。もちろん予約時点で室内面積は確認したが、実際に来てから現実に直面する。まぁ、今回は一か月の長旅で宿泊代をなるべく節約したが、ケチるとこういうことなるのだ・・・。


部屋で少し休憩した後、酒の肴にする「羊串焼き」を買いに出かける。ホテルのフロントスタッフに聞くと「朶楊烤羊肉」という店を勧められた。ホテルからも近く徒歩5分ほど。店内は狭い。おやじさんが休むことなく炭焼きコンロの前に座って串を焼き続けている。羊肉串は1本2.5元、自分は10本買って帰る。外は多くの人が歩いている。というのも、このホテル周辺では夜になると多くの屋台が出て、お祭りのようになるのだ。ただこの日は長時間の移動でくたびれたので、周囲の散策は翌日以降にする。

炭火で焼いた羊肉串は香ばしくジューシーでとてもおいしい。その合間、人生初の青稞酒を飲んで口中の脂分を洗い流す。う~ん、なかなか至福なひと時である・・・。さてさて、翌日から本格的な西寧観光が始まる。ひとしきり飲んだら早めに寝よう・・・😴

1ヵ月間の中国西部(9)吐魯番 ❻


【7日目】トルファンの4日目、滞在最終日。この日は特に計画を立てず、ゆったり過ごすことにした。外出はしたが、ホテル周辺をのんびり歩き、途中で昼食をとってからホテルに戻るというだけ。ただここを離れる前に、焼きたてナンを買って食べたいという希望はあった。

午後1時過ぎホテルを出発、「車師中路」を南下して「老城西路」に出ると西に向かって歩く。先日の交河故城の帰りに車でこの路を通った時、運転手さんから市街地内では古いエリアと聞き少し興味を持ったのだ。しばらく歩くと「姿態理髪店」があった。カット料金は25元という。時間に余裕があるので散髪してもらうことにした。スタイルお任せで頼んだ結果、見事な「トルファン・カット」が完成。自分が「パイナップルおやじ」にも見える。今回お店の人に頼んで、人生初となる「自身の散髪中の様子」をスマホで撮ってもらった。珍しさからか、毎回これを見ると何か特殊な面白みを感じることができる。今では自分にとって貴重な一枚の写真である。

散髪後、老城西路の散策を続ける。途中、商業施設「大華商場」を見学。屋内は天井が高く比較的涼しいので、人々は食事や買い物などをして快適に過ごしているようだった。
店を出ると、おなじみの新華書店があった。ウイグル文字が並記されていると、やはり雰囲気が違って感じられる。

その後も歩き続けていると、軽食屋さんの前でサムサ(烤包子)を販売しているのが見えた。これは羊肉餡を小麦粉の生地で包み窯焼きにした食べ物。焼く前の生サムサも板の上にズラッと並んでいる。焼きたてはきっとおいしいはずだ。ただこの後しばらくしてから昼食をとるつもりだったので、2個だけ購入して店の前のイスに座って食べた。最初の印象はただ「熱い!」ということ。口がヤケドしそうなほど熱く味もよく分からない。2個目も熱かったが味わって食べた。薄味で素朴という印象だ。焼きたては寒い時期に食べれば一番おいしく感じるのだろうが、この時の気温は40℃越えの暑さ。ちょっと食べる時期や場所を間違えたようだ・・・。再度歩きはじめると、店頭にナンを山積みにしているおなじみの風景が目に入る。

やがて「高昌中路」との交差点に至る。この北西角には市内で一番古いデパート「吐魯番百貨大楼」がある。前日の運転手さん、そして彼のお父さんも以前ここで働いていたという歴史ある老舗だ。気になったので中を覗いてみた。すると装飾も陳列方法もあまり洗練されておらず、店員もリクライニングチェアに寝そべりスマホを見ながらくつろいでいる。さらに驚いたのは、マネキンにズボンをはかせず下半身丸出しで陳列していることだ。準備中かどうかは知らないが、それは客のいない時間帯か、見えない場所で作業するべきではないのか。それとも上のジャケットだけを販売したいのかも知れない。確かにズボンをはかせる作業時間が節約できて合理的とも言える。ただ景観的にはNGである。日本の「大丸松坂屋百貨店」とは雲泥の差だ。まぁこれが文化・習慣の違いということなのだろう。

「香疆園大酒店」で昼食  吐魯番百貨店を出て、老城東路を更に東に進み、柏孜克里克路で左折し北上。しばらくすると香疆園がある。ここは事前に調べていたわけでなく、店の様子や料理の写真を見て決めた。時間は午後2時過ぎだったので、客は私一人。店内は比較的清潔で雰囲気もよい。注文したのは新疆に来てから時折り食べているラグマン(拌麺、汁なし混ぜ麺)と羊肉串焼き3本(内1本は肝焼き)。室内環境がいいので落ち着いてゆっくり食事できた。

ホテル近くのナンのお店に寄った。焼きたてのナンはなかった。聞くと夜8時以降に焼き始めるというので、その時間にまた来ることにしてホテルへ戻った。

夜8時半頃に訪れると、聞いたとおりナンを焼いている最中であった。ナンを窯で焼く作業を実際に見るのは初めてなので少し興奮し、写真をパチパチ撮影した。そして念願の「焼きたてナン」を購入しホテルへ戻った。

トルファンの最終日はこのようにして終わった。天候に恵まれ、観光や食事も十分楽しむことができた。さあ翌日は青海省・西寧。また違った体験ができることであろう。