五泊六日の香港・澳門・珠海(4)


【四日目】澳門の二日目、この日は朝から精力的に世界歴史遺産巡りに出かける。数は多いが比較的狭いエリア内に集中しているので、大半は徒歩での移動となった。最後の目的地「ギア砲台跡」の見学後、夜まで時間があったので広東省・珠海に行ってみた。珠海滞在は3時間、駅前の釜飯屋さんで食事し周辺を散策してから澳門へ戻った。短時間内に入境し出境するという珍しい体験をしたが、現地の越境労働している多くの人達にとっては出入境も地下鉄のようにスルッと通過するだけの認識なのだろう。
ところで最近は仕事が忙しくなり、また清明節・労働節・端午節・夏季休暇と次々に旅行の計画・準備をしているので記事編集がなかなか進まない。そのうえ今後掲載予定の記事もかなり蓄積してきてた。そこで今回、各観光スポットの概要は現地案内板の画像に任せ、自身の簡単な感想だけを記すことにした。

朝食の焼きそば  宿を出て先ずは徒歩で半島南の「媽閣廟」に向かう。途中、コンビニ「セブンイレブン」で澳門の交通カード「Macau Pass」を購入、いくらかチャージした。その近くに食堂があったので朝食をとった。壁面のメニューを見ると種類が多い。ここはまぁ無難に「肉絲炒麺」(豚肉焼きそば)+「追加野菜」を注文。味は良い。野菜もおいしく追加して正解だった。量は年を取り胃袋も小さくなっているので充分。支払い時、このような小さい食堂でもマカオ・パスが使えるのがうれしい。その後近くの港をチラッと見学、対岸は珠海だ。


【世界遺産】媽閣廟  大きな岩がゴロゴロいくつも存在し、何かパワーを感じる神秘的な場所だ。熱心な参拝者も多く訪れ焼香していた。ここからも対岸・珠海の山並みや高層ビル群がよく見える。自身にとってはこの日の観光スタート地点、この先多くの訪問地が予定されているのでササッと見て終わった。


【世界遺産】鄭家屋敷  媽閣廟の後は半島を北に向かって進む。先ずは近くの「港務局大楼(世界遺産)」に寄り、建物外観をサラッと見学、そして鄭家屋敷に移動する。ここは部屋数も多い大きな建物で、現地の伝統的な建築様式を興味深く拝見した。


【世界遺産】リラウ広場  鄭家屋敷の道を挟んで向かいにある公園。ボダイジュモドキ(假菩提樹)の大木が枝を広げている。訪れた時は人は少なかったが、夏の蒸し暑い季節には大木の存在意義が大いに発揮され、人々の憩いの場所となるのであろう。


【世界遺産】聖ローレンス教会  鄭家屋敷から徒歩5分ほど。自身はキリスト教徒ではないので、普段は教会の中に入ることは滅多にない。今回は建物外観や内部をじっくり眺めて何か新鮮な感じがした。そう言えば今住んでいる哈爾濵には観光客に大人気の聖ソフィア大聖堂があるが、いつも通りすがりに外から眺めるだけで、まだ一回も中に入っていないことを思い出した・・・。


【世界遺産】聖アントニオ教会  ここに来る前に、それぞれ世界遺産の「ドン・ペドロ5世劇場」、「聖オーガスティン教会」、「聖オーガスティン広場」、「民政総署」等を見学したのだが、それらの記事は省略する。民政総署を出て付近からバスに乗り聖アントニオ教会に移動。今まで見てきた教会と同様、敷地内はゴミ一つなく清潔に管理されていて心が落ち着き安らかになる。


【世界遺産】ギア要塞  聖アントニオ教会付近からバスに乗りギア要塞近くで降りる。この砲台は澳門半島で最も高い位置にある。そのためバス停から要塞まで長い登り坂が続き息が切れる。やはり冬に訪れたのは正解だった。もしこれが蒸し暑い季節だったら寿命が短くなるところであった。そう言えば去年は連日猛暑の金沢市をフーフー言いながら歩いたことを思い出した。年齢を考えると無理は禁物だ・・・。さて要塞とあるが、敷地内には教会や中国沿岸では歴史上初という灯台もある。この日は曇で眼下の街はくすんでみえたが、天気の良い日は最高の景色が楽しめることだろう。


3時間の珠海  ギア要塞を見終えたのが2時過ぎ、その後は予定もなかったので珠海に行くことにした。バス停で出入境施設まで移動、人の流れについて行く。外国人用の出境手続きの列にしばらく並び、ようやく係員にパスポートを提示、訪問理由などを述べてから珠海側へ出る。越境労働をしている多くの人達は地下鉄駅のように次々と自動機に身分証をスキャンさせて簡単にゲートを通り抜けている。その時見ただけでもかなり多数の人が移動していた。
珠海では駅周辺を少し散策し、お腹も空いたので適当に見つけた釜飯屋さんに入る。

釜飯屋さんでは「黄鱔腊肉双拼煲仔飯」(タウナギと燻製肉の釜飯)を注文、ビールはなかったので近くのコンビニで買ってきた。香港で初めて食べた時、他の具材の釜飯も食べてみたいと思っていたので丁度よかった。また値段も香港よりずっと安い。時間の関係か店内は空いていたので、「海珠ビール」(注:「珠海」ではなく「海珠」)を飲みながら落ち着いてゆっくり食事できた。

食事後は辺りを少し散策し、暗くなる前に澳門へ戻ることにした。途中駅前広場を通ると、鄧小平が珠海を訪れた時に揮毫した「珠海経済特区好」(1984年1月29日)が金色に大きく拡大されて示されているのが見えた。何と自分が珠海を訪れたこの日も1月29日、ちょっとした偶然に少し驚く。小平さんの訪問から40年が過ぎたということだ。もし小平さんが現在の中国の状況を見たらどう思うのであろうか・・・。

珠海から澳門に戻り、宿に着く頃には完全に暗くなっていた。「セナド広場(世界遺産)」を通り抜け北奥にある「聖ドミニコ教会(世界遺産)」まで来ると、その黄色い外壁がライトアップで暗闇にピカッと浮かび上がって見えて、なかなかきれいだ。
さてさて、この日は半島の南から北へ慌ただしく移動して少々疲れた。翌日は香港へ戻る。部屋では残りのポルトガル・ワインを飲みながらゆっくりしよう。

三泊四日の山海関(3)


山海関の二日目、この日は海岸にある「老龍頭」風景区、そして古城内のまだ訪れていない場所を観光する。浜辺に来るのはこの年8月の金沢市の内灘海岸、りんくう公園のマーブルビーチ以来だ。今回は冬だが久々に潮風に吹かれながら眺める海の景色を楽しみにしていた。ちなみにマーブルビーチは人工的に白玉石を敷き詰めたジャリジャリ硬い場所で、確かに見映えはいいが、自分は天然のサラサラした砂浜のほうが好みである。
タクシーに乗り約15分で風景区に到着、観光客の数は前日の角山長城と同様に多くなかった。敷地面積は割と広く観光ポイントも所々にあるが、先ずは人気No.1の「入海石城」に向かう。

上の画像は「澄海楼」、その前を通り「入海石城」に向かって少し下ると「天開海岳」の石碑がある。現地にはこの石碑の説明がなかったので帰ってからネットで調べた。それによると伝説では唐代の碑で「薛礼碑」と呼ばれている。それは高句麗遠征で功を挙げた薛仁貴(薛礼.614-683)が建てたことに由来する。そう言えば二か月前の10月に太原の「晋祠」を訪ねたが、そこに太宗・李世民が第一次高句麗遠征の帰りに寄り建立した石碑「晋祠之銘並序」〈貞観20年(646)〉があることを思い出した。歴史のつながりが分かると面白いものだ。
《参照:八泊九日の石家荘・平遥・太原(8)


入海石城  その名の通り渤海の海中まで続く城壁で、ここが万里の長城の東端である。現地の説明では1987年に海側へ拡張工事が行われたとのこと。確かに何百年も経つと地盤の隆起や堆積により海岸線が沖に後退すること(海退)もあるだろう。そうなると正真正銘の「入海石城」とは言えなくなり、また見映えも悪いので改善工事が必要になったのかも知れない。
さて思い返せば2012年7月、明代長城の西端「第一墩」(甘粛省・嘉峪関の西)を訪れた《参照:【回顧録】16日間の甘粛(上)嘉峪関》。その後十年以上を経てようやく東端にも来ることができて感無量である。その間の人生、楽しかったことや苦しかったことなど様々だが、今このブログを見て振り返ると、失敗も多いが概ね充実した人生だったと感じる。家族を含め関わったすべての人たちに心から感謝したい・・・。

上:石城先端から北方を望む。下:南方を望む。中央の建物は海神廟。


浜飲み@老龍頭  石城の南にある砂浜を歩いて海神廟へ向かう。この建物も海上まで伸びているので浜辺とは少し違った景色を楽しむことができる。早速「浜飲み」に適した場所を見つけて座り、カバンから缶ビールを取り出して飲む。プハッ~、気分爽快!海で飲むビールは最高だ・・・。その時の景色を20秒ほど動画撮影したので紹介する。実は当ブログで動画を掲載するのは今回が初めて、記念すべき第一号作品である。


東門「迎恩楼」  海から古城に戻り観光を続ける。迎恩楼はホテルから近いので何度も見たことはあるが、城門上の楼閣に登るのは今回が初めてである。眺めは大変良く、東には鐘鼓楼、北には角山がきれいに見える。


双文井  迎恩楼を下り城内を歩いていると鐘鼓楼の近くに「双文井」という二つの井戸を見つけた。現地の説明を読むと、明・嘉靖『山海関志』に記述があり、城内の他の井戸水は鹹鹵(かんろ、塩気がある)であるが、双文井の水は甘滑(かんかつ、甘く滑らかでおいしい)とある。また古くからの言い伝えとして、この水を飲むと進士に及第できるとして、外国使節も水を持ち帰り贈答品にするなど国内外問わず人気があったという。残念ながら今はこの井戸水を飲めないようだ・・・。

下:『山海関志』「山川一之三」の「双文井」に関する記述部分の画像。
国立公文書館デジタルアーカイブ所載データの画像に赤い傍線を加筆・転載した。


南門「望洋楼」  南門は古城に到着した初日に通った門で、その時は城門上の楼閣には登らなかった。今回初めて登ってみると、やはり眺めがとても良い。北に鐘鼓楼とその奥の角山、そして少し東側には「天下第一関」の扁額で有名な東門も見える。

望洋楼を下りたのは午後三時半頃。この後は「王家大院(山海関民俗博物館)」に向かう。
続きは次篇にて・・・。