びっくり!中華風味の富士山

4月下旬、小雨が降るどんよりした曇日。気温は高くないので不快感はあまりない。京都駅から歩いて京都国立博物館へ向かう。目的は池大雅の展覧会である。以前も京都文化博物館の池大雅展へ行ったことがあり、久々にご対面の作品もある。

チケットを見せて敷地に入り、少し歩くと左手にロダンの「考える人」がある。妙な好奇心がムクムク沸き起こり、像をモデルに見立て、様々な角度から何枚も写真をパチパチ撮った。どの位置から撮影しても見栄えがし、さすが立派な彫像作品であると感じた。

池大雅 倣董太史富岳図
(京都国立博物館「特別展-池大雅」図録より)
董其昌 林和靖詩意図
倪瓒 容膝斎図

いよいよ館内に入り鑑賞を始めた。色々感じるところはあったが、特に印象的だったのは「倣董太史富岳図」である。彼は中国絵画から強い影響を受けた結果、倪瓉(元代)とその影響を受けた董其昌(明代)風の景色に、日本の象徴である富士山がペタッと貼り付けたのである。いわば「中華風味の富士山図」で、個人的には何か違和感があり、不気味に感じた。まぁ当時のパロディ画と考えれば面白いとも言える。

ところで董其昌といえば、今私が滞在している「松江」は彼の出身地だ。実際に旧市街を散策していると、彼に関する文物を時折見かける。先日訪れた「酔白池」の地では、当時彼は幾つか建物を建てたという。そして現在、園内には彼の石像が設置されている。

上海生活:雨のち晴れ(2015.05)

異国での仕事や生活は、意識、無意識を問わず、肉体的、精神的なストレスが生じるものである。到着後の四、五日はまだまだ元気であった。それが突然体調が悪化し、頭や腹、関節が痛み、食欲もなくなったのである。原因は不明であるが、おそらく最初は気を張っていたが、慣れた頃に気が弛み、潜んでいた疲労とストレスが襲来したのかもしれない。ただ白酒をグビグビ飲んだことにも多少の原因はあるかも知れない。結局今回も薬や力保健(リポビタン)のお世話になった。やがて体調も回復し、休みの日は外出する。休日の過ごし方は前回とほぼ同様である。上海博物館でお宝を拝見し、福州路の書店や南京路の朶雲軒で買い物し、豫園で小籠包を食べ、外灘辺りをぶらつく。

上海博物館へは昔から何回も行っているが、見飽きるということはない。ただ全館をくまなく回ると足が痛くなるので、最近は3階の絵画館、書法館、印章館だけ行く。多少の展示替えもしているようで、いつでも楽しく鑑賞できる。同じ作品であっても、見る時期によって感じ方が変化することもある。そこで、今回は気になった作品を紹介しよう。書では祝允明「草書牡丹賦」と黄道周「草書五律詩」。どちらも力強さがあり、「牡丹」は大胆さ、「五律詩」は気骨を感じる。画では倪瓚「渓山図」と南宋「歌楽図」。「渓山」は孤高の精神を、「歌楽」は宮中の華やかさを感じる。特に宮女の衣は鮮やかである。

実は先日に歴史ドラマ「尽忠岳飛」(全69回)を見終わったところで、官服や軍服の色も鮮やさが印象的であった。ただ、悲しい結末に何とも切ない気持ちになった。そして何度か杭州の岳廟を訪れたことも思い出した。