八泊九日の石家荘・平遥・太原(4)


【三日目】朝、ホテルの部屋でインスタントの今麦郎「山西刀削麺」を食べてから出発する。バスで石家荘北駅へ行き、列車(二等寝台三段目・硬卧上铺)で太原まで行き,別の列車(硬座)に乗り換えて平遥に向かう。今回は大型連休なので直通列車の切符が買えなかったのだ。
さて山西省にある平遥は明代の城壁がほぼ完全に残っていることで有名な観光地だ。世界遺産にも指定されている。自分もかなり以前から行きたいと思っていたが、今回ようやくその機会を得た。


平遥駅に到着  古城の最寄りの城門「鳳儀門」までは徒歩約10分。城の周囲は市街地が広がり、駅から直接城壁は見えない。しばらく歩いていると突如道の奥に城壁が見えた。あれが平遥古城か! 確かに存在感は抜群である。先にスーパーで買い物してから城門前で入城料を払い、やっと中に足を踏み入れた。先ずは予約してある旅館「源隆客桟」へ向かう。
旅館に到着、手続き後に部屋へ案内される。主人は土産店も経営していて、部屋の出入りには土産店の中を通ることになる(その後、外に出る別の通用口を発見)。土産店は明代の建築物だが、宿泊用の建物は70年代に古代様式を真似て建てたものだという。
部屋に荷を下ろし、中庭で少し休憩する。慣れない土地を朝から次々と移動してきたので少々疲れた。旅館で買った地元ビールと、来る途中のスーパーで買った白酒を飲む。すると元気が徐々に回復、そこで城内の散策に出かけることにした。


城壁の上を歩く  宿を出たのが午後5時半、日が暮れはじめて辺りは次第に薄暗くなってきた。宿から近い「鳳儀門(下西門)」から城壁を上る。上から見る景色は格別、城内は高いビルなどの視界を遮るものがないので、かなり遠くまで見通せる。途中写真をパチパチ撮りながら全城壁の約1/3の距離を反時計回りに45分くらい歩くと「迎薫門(南門)」に到着した。すると係員さんが城壁の上はまもなく見学終了時間になると言うので、地上に下りて城内の散策を始めた。


城内の散策  日が暮れた城内のメインストリートは旅館や商店の電飾で明るく輝き、予想はしていたがかなり多くの観光客でにぎわっていた。ただ問題も起きた。城の中心にある「市楼」の南約150mの地点で、人々が道の両方向から殺到、異常に混雑し危険な状況が発生していた。自身もその近くにいて、2022年10月に起きた韓国ソウルの雑踏事故を思い出し緊張した。実は今回の滞在中に同じ場所で2度雑踏に巻き込まれ、1度目は来た道を戻り人の少ない脇道へ回避した。2度目は雑踏の中で前後左右から人の圧力を感じ、将棋倒しにならないかとヒヤヒヤしながらもゆっくり進み、何とか混雑地点を通り過ぎた。ただ後で冷静になると、危険を感じたら引き返す勇気が必要だったと大いに反省した。何か起きてからでは手遅れなのである。それ以外の場所は人は多いが危険を感じるほどではなく、普通に夜の町の景色を楽しむことができた。


平遥古城には数多くの飲食店が存在するが、観光客向けの郷土料理メニューは下の画像で示したようにどの店も大体同じ内容だ。もちろん食事も旅の楽しみの一つ、せっかくの機会なので翌日からは自分もご当地グルメに少しずつ挑戦してみよう。


メイン道路から外れて暗い路地に入ると、店も無く人通りも少なくてうら寂しい。ただそこでは古城の夜の別の姿を見ることができる。崩れかけたレンガの壁、古い建物のアーチ型の門、それらが灯りに照らされて暗闇に浮かびあがり、まるで大きな彫刻作品のようである。
平遥の一日目はこのようにして終了した・・・。

三泊四日の瀋陽(1)2023.04.01

ついに韮菜盒子を発見、この日を待っていた!!


今回も哈爾浜駅から高速鉄道を利用、瀋陽まで約二時間半。車窓からの景色は2月に長春に行った時と違い雪や氷の寒い景色はすべて消え、広大な穀倉地帯のなかにの樹木の緑も多少目立つようなっていた。瀋陽は観光したいと思う場所が多く三泊四日では不十分だ。そこで今回は目的地を故宮、帥府、昭陵、張作霖爆殺事件現場(博物館含む)にしぼった。もちろんご当地グルメも楽しみだ。


先ずは新幹線駅の「瀋陽北駅」に到着。そこから地下鉄で「瀋陽駅」まで移動、駅からは予約済みの駅近のホテルへ歩いて向かう。地図を見れば一目瞭然だが、当時の都市開発で瀋陽駅を中心に三つの大通り(中山路・中華路・民主路)が東へ放射状に延びている。その影響で三角柱(ショートケーキ 🍰 のような形状)の建物をよく見かける。三角柱といっても角部分は適度に削ってエントランスに利用する場合が多いようだ。今回泊まったホテルも同様だ。私は放射状の道に慣れていないので地図を見ないで歩くと方向感覚が狂い、目的地まで遠回りしてしまったことが数回あった。慣れたら逆に便利だと感じる場合もあると思うが・・・。

今回お世話になるホテル「倍思酒店」 ビルが崩壊しそうな感じで怖い・・・


ホテルで少し休んでから中山公園まで散歩に出かけた。公園は円形で中心部には毛沢東の巨大な銅像、周囲には満州国当時の建築群が残る。それらの画像を以下に示すが、面倒なので説明は省略する。また夜間にライトアップされた景観もきれいだと想像できるが、今回はなぜかその考えが頭から抜けていた。つまり夜間の広場に行かなかったのだ。まぁ瀋陽には近い将来また来るつもりなので次回の楽しみにとっておこう。


遼寧賓館(旧大和旅館)  正面入口から入ってロビーを通り、周囲をキョロキョロ眺めながら奥のレストランへ向かった。食後は階段を上って二階フロアも少し見学した。やはり歴史と格式のあるホテルには落ち着いた良い雰囲気がある。それに比べると今晩泊まる安宿は実に貧相で、季節は春だが心のなかは初冬の風が吹いているような寂しさ、切なさを感じる。以前上海でどこの安宿も満室で仕方なく外灘の「和平飯店・南楼」に宿泊したことがある。全体的に老朽化はしていたが、石材や木材を使った重厚感あるロビー内装、高い天井、大きな部屋のドア等々、西洋建築の独特な雰囲気を味わうことができた。やはり短い人生、時には伝統のある有名老舗ホテルを利用するのも良い経験になるだろう。


遼寧賓館レストラン  入店したのが4時頃ということもあり客は私一人だけ。広い空間にポツンと一人で食事するのは何か変な感じである。先に瓶ビールを出してもらい、飲みながらメニューを見て料理を決める。メニュー頁をめくっていると見覚えのある形の料理とその名前が目に飛び込んできた。それは「韮菜盒子」、即座に注文を決めた。このジャンボ揚げ餃子のような食べ物には特別な思いがある。その経緯は当ブログの「韭菜盒子について(追記:自宅のニラ栽培)2019.07」で既に述べたので割愛する。いつか中国で食べてみたいと思い続けて四年、ついに韮菜盒子を食べる機会が到来したのである。


さて運ばれてきた出来たて熱々の韮菜盒子を一口パクつくと、衣はサクサク、餡はトロ~リとしていて、ニラの香りが口いっぱいに広がる。なるほど期待を裏切らないおいしさだ・・・。
それ以外には二品:メニューを見てこれは間違いないと感じた「遼賓紅焼肉」、酸味が食欲をそそる「酸辣豆芽」を注文。結果はいずれも抜群の味でたいへん満足した。

『夜市人生』で客が韮菜盒子を食べるシーン(画像は腾讯视频より転載)


さて晩は侘しい部屋で地元の白酒「老龍口」をチビチビ飲みながら翌日以降の旅程を考え、そしてこの日は終了した。